番茶も出花と言うけれど 拾  

 月四朗は布団の上に散った自らの白い濁りをすくい取
り、鼻先に寄せていた。
 臭いを嗅いだり舐めようとしてみたりの百面相を繰り
返す様に、からかう様に声を描ける酉次。
 「手前の出したもんがそんなに珍しいかよ」
 「もの自体は珍しくねぇ、けどさぁ」
 空いた手で萎えた一つ目小僧の頭を擦って残りの露を
搾り出し、手と手を寄せて又見比べる。そして、
 「う、苦ぇ…」
 ペロリペロリと片方ずつ舐め、自分の味を確かめてい
る。
 「まあ、そんなもんだろうさ」
 笑う酉次に膨れ面で返す。
 「笑うない!こっちの味は初めて見るんだしヨォ」
 「そりゃあ、俺だって見世に出てから何回となく人様
のもんは味わっちゃあ居るが、手前のもんは味わおうと
は思わねぇなぁ」
 「う…」
 「まあ、良いわさ。それで又少し度胸もつくってもん
だろうし」
 言いながら月四朗の背中に回り込み、胸の辺りに触れ
てやる。見世から回った噂ではその辺りも月四朗は弄っ
ていた筈だから。
 「や、あにさ」
 「如何されたい?」
 「擦って、摘んで」
 「こうか?」
 噂は正しかったらしい。耳朶が又紅く染まり、息も少
し上がり加減の様だ。そして酉次が弄ってやると肌を押
し付ける様にして次を強請ってくる。その肌も、先程の
冷え加減が嘘の様に熱い。
 そして、不意に酉次の鼻は丁子油の匂いに気付く。新
たに塗り付けた覚えはないがと思って月四朗の股座をじ
っと見遣ると、内からタラリと漏れているらしい。
 「はしたない尻だなァ、おい」
 「ちが…わ…」
 返事を言い切らせると又体を堅くしそうなので、用意
の人参の一番太いものを挿れてやる。途端に、堅くなり
掛けていた体がやんわりとなってくる。
 「如何するよ?」
 「ゆっ、くり」
 「揺らすのか?」
 こくりと縦に首が振られたのを合図に小さく上下にそ
して左右に、後は自分の昔を思い出しつつ揺らせてやる。
 月四朗は抗いの言葉さえ出さなくなった。ただ、荒く
息を吐いて気を遣ろう気を遣ろうと一心に善がっている、
様に見えた。

            (2005.5.27)