「足、みせてみな」
いつもながらぶっきらぼうな声。僕がここに
来る時はこれでも愛想が良くなってるって言う
んだけど、ホントかな?
「怪我なんかしてねーよ」
「ふーん。運動神経悪いのに?」
「余計なお世話!日焼けでもあったら悪い
訳?」
「日焼けはまだ何とでもなるさ」
「じゃあなんだよ」
「脛毛。お前、最近急にでかくなったしな。
チ」
セクハラ発言の前に小道具の枕をぶつけて
おく。僕だってお年頃って奴なんだぞ?大人
になるのは楽しみだけど、大人になりかけっ
てのは恥ずかしーんだよ!
でもこのままオッサンの妄想に付き合って
あげる義理はないしなー…言っとこうかな。
「毎晩やってて、悪い?」
「若いねー」
「良いじゃん。スッキリするし」
「ま、覚えあるけどね。俺も」
「100年前?」
「ダーホ。20年前だよ」
あ、確かに愛想が良いみたい。他の奴が同
じ様なやりとりしてたの見た事あったけど、
その時はちゃんと鉄拳制裁付き。僕の時はど
んなに憎まれ口叩いても苦そうな笑いだけ。
「脛毛、濃いと駄目?」
「お前ね、誰が写真欲しがってるのか考え
てみなさいよ」
「チェッ。折角いい感じなのになー」
「四の五の言わず、脱げ!」
「下着も?」
「サービス良いな」
「手早くしてね」
勃っちゃってるしさ。
「こう言う時にハーフって楽だよな」
いつもより一寸強い光が違った角度から当
てられる。
「根元のはアクセントに丁度良いやな。別
口のアクセントも欲しいけどな」
「そっちはもうすぐかもね」
「前もって準備しとけよな」
「歩き難いじゃん」
同じ程の体格のテディベアと正面から抱き
合ってみる。
「倒錯的じゃね?」
「あんたに写真撮られるよりまともかもね」
「口減らない餓鬼」
「冗談でも言わなきゃ、ってね」
何でこんなオッサンに惚れちゃうかなー。
そして出来上がった写真が多分僕からのラ
ブレター。粗末にしないでよね。僕を忘れて
も良いけど、さ。 (2003.10.2)