遊戯家族

 家族に間違われるのは嫌じゃない。間違われ
ている方が、かえって興奮するから。

 思い返してみれば川の字以外の状態でベッド
に入ったという記憶がほとんど僕にはない。人
生が十年以内ならありうる回答かも知れないけ
ど、十数年生きてきてそう言う回答しか浮かば
ないというのはある意味すごいんじゃないだろ
うか。
 まあ、僕をはさんでいるのは厳密に言えば家
族じゃないけどね。成り行きで家族の振りをし
てくれてるありがたい人達なだけで。最近はそ
の関係に性的なものが加わった。只それだけ。
それでお互いの距離のバランスが大きく崩れて
いると言う訳じゃない。そういう事を考えると、
うちの「両親」って相当体力あるんだなと思う。
夫婦の営みの後に僕を交えて色々やっているん
だから。
 「ナニ小難しい顔してるの?」
 「んー。二人とも体力あるよね、と」
 話しかけてきたのは両親一号対世間的には
「母親」のかをるさん。体も戸籍上も精神的に
もきっちり男の人だ。ただ、物腰のせいでよく
間違われるらしく、本人も敢えて訂正していな
い。僕も最初がら見事に間違えた口。、
 「正文君が美味しくなってきたからね。良い
刺激になってるんじゃないかな?」
 会話中にまさぐられるのも今は慣れた。最初
は熱りを抑えるのが難しかったけど。
 「美味しく…かをるさんでもそう思うんだ」
 とりあえずは脱力してまさぐりやすく。幾ら
なんでもそうそう回復のスピードは上げられな
い。かをるさんだってまだ軟らかいままだし。
 「ま、そうだね。俺にしても冴にしても正文
君の年代って元々射程圏外の筈なんだけどね」
 冴ってのが両親二号で「父親」役。川の字の
もう一方で、今軽くいびきかいてる。まあ、今
日は一寸疲れたかも知れない。三連結の真ん中
やった後で一番上やってたから。
 ちなみに僕は冴とかをるさんどちらとも血は
繋がっていない。二人から聞く所によれば僕は
かをるさんの遠縁の子供らしい。それ以上は興
味がないから聞かないよって事にしてる。二人
が僕の両親役を引き受けたって事実があればそ
れで充分だと思うし。
 ただ、その「両親」と肉体関係を持つように
なったのは多分三人ともに想定外の出来事だっ
たんだろうな。僕は結構慣れてるけど、冴は未
だに一寸ためらいがあるらしい。一番激しく行
為に没頭してるのにね。
 「正文君の成長加減が微妙な所だからね。正
文君が完全に大人になってから実はね、って言
う予定だったから」
 困ったように笑いながらかをるさんが口を吸
おうとしてくる。キスと言うよりは口吸いと言
う表現が似つかわしいこの行為、僕はかなり好
き。もちろん受けて立つ。かをるさんの唾液っ
て良い味してるしね。
 合わせた唇の中で唾液が混じりあう音を聞き
ながらかをるさんの背筋を撫でてみる。うっす
らついた皮下脂肪の下に埋もれている背骨の感
触を味わいながら舌を絡め合わせる。こう言う
親子のコミュニケーションもありって事で。
 そのまま雪崩れ込もうとしたら不意にお尻を
割られ、指をねじ込まれる。
 「さぁッ、えぇ…何す」
 「目の前で尻が動いてれば何か差し込むのが
礼儀ってもんだよな」
 冴の声は完全に笑ってる。一旦引き抜かれて
今度は二本同時に指をねじ込まれる。リラック
スして緩んでいた所だから難なく飲み込んじゃ
うし、又上手い具合の所に当たるもんだから一
瞬でイきそうになる。
 「戴きま」
 言うが早いか勃ちあがった僕のものは冴の口
に収まる。舌じゃなくて口の中をたくみに使っ
て転がされる。粘膜でもみ込まれる様な感覚は
こういう時に本当にきつい。火をつけられて煽
られて火だるまになるようなものだ。
 「下だけでもいやだよね?」
 かをるさんも顔付きが変る。欲しがりモード
になった時のかをるさんって本当に底無しだ。
耳を丸ごと口の中にくわえ込まれて転がされる。
甘噛みが時々混じってその度軽く電流が走った
ように感じる。
 いつの間にか僕を挟んで冴が前面、かをるさ
んが背後と言う配置になる。耳を愛撫しながら
胸を撫で、乳首をじわじわ堅くさせているかを
るさんと玉袋を口の中で転がしている冴。優し
いけど鬼畜な親だよな、と砂粒ほど残った理性
がつぶやいて姿を消す。
 僕にも火はついてる。面倒な事は考えないで
流されてしまおう。体のほてりを沈めなきゃ、
のんびりもまったりも出来ない。

 感じるところだけに神経を使う事にして、後
は力をだらりと抜いてみる。そしたら足を高く
持ち上げられてお尻の穴を丸出しにされた。今
更なんだけど、こういうのは一寸恥ずかしい。
やる前ならそれ程恥ずかしくないんだけど、や
った後だから色々もれて臭いそうで恥ずかしい
んだ。
 「くっせー」
 からかう様に笑いながら冴がつぶやいて、穴
から舌を差し入れてくる。僕の中にたまってい
る放たれたものを全部吸い取る様に、高く音を
立てながら。冴の舌の感触と吸い取られながら
内側をこする粘液の感触。思わずお尻に力が入
り、冴の舌を締め付けてしまう。
 一瞬止まる舌。それでも次の瞬間には更に僕
の中を広げようとしてくる。時々内腿を軽く噛
みながら。
 「正文君、力抜いて」
 かをるさんはこういう時でさえも口調が丁寧
だ。冴に対しては幾分ぞんざいになるけど、僕
に対してはいつでも静かで丁寧。教育的配慮っ
て奴?
 でも、かをるさんは興奮してる時、口調は丁
寧だけど手順が少し荒っぽくなる。一寸Sが入
るって言うのかな?僕をつねったり噛んだりし
て、その反応を楽しんでいるなって感じがある。
今だって乳首を軽くつねったり耳を強めに甘噛
みしてみたり。その痛みのタイミングが絶妙で、
僕の興奮が増してしまうからすごい。
 「ちょ…!どこさわ」
 「じっとしてて。痛くなるよ?」
 かをるさんの右手が乳首から下に来たと思っ
たら臍の辺りを這いずり回りだした。上から押
さえたり指を軽く差し込んできたり。なんだか
妙な感覚にあふれてもどかしい感じになる。
 「余りやっちゃいけないんだけどね。感じる
?」
 「変な感じ。気持ちはまあ、いいけど」
 「舐めた方が良い?」
 「又今度ね。今日はもう舐められるのはおな
か一杯」
 「じゃ、舐めるか?」
 声と一緒に鼻先に突きつけられたのは先走り
でぬれた冴のちんちん。僕よリ頭半分背が高い
程度の体格なのにちんちんは大人以上だったり。
手術もしてないみたいだし。
 「すごいニオイ」
 「嫌いじゃないだろ?」
 「うん。好き」
 割れ目から胴に唇をはわせて舐めてきれいに
する。もったいなくはあるけど、区切りとして。
自分の事ながら許容範囲が広くなったもんだと
思う。最初は家族としての義務感で受け入れよ
うとしたけど無理だった。快感を共有している
んだと割り切ってから入ったものを舐めるのに
も抵抗がなくなった。むしろその方が距離感を
感じなくて済む。
 「正文、上手くなったよな」
 「教育の賜物?」
 「ナマ言うんじゃないよ」
 玉袋から裏筋、そして後ろ。体臭が殆どない
かをるさんに比べ、冴の場合何もかも臭いがき
つめだ。後だって例外じゃない。内側からの臭
いは余りしないけどその周辺は結構癖がある。
穴の周りのひだも結構深いし。だから舐め甲斐
があるんだけどね。冴を鳴かせるのも楽しいし。
 「すっげ…」
 「ほいひ…ひい?」
 「ん…すげぇ良い。吸ってくれな?」
 「んふ」
 穴の周りをしっかり吸う。少し苦い感じもあ
るけど、それはそれで興奮の為のスパイスにな
るから。
 僕が冴を攻め立てているのと平行してかをる
さんが僕をいじる。軽く臍に差し込んだ指を鼻
先に。自分の臍の臭いで興奮してしまうのって、
相当な変態なんだろうか。
かをるさんの口も休んでない。耳たぶを噛んで
きたかと思ったら舌を突き出して耳の穴に差し
込んでくる。くすぐったい様な背筋に何か走る
様な変な感じ。生暖かい湿り気が不意に触れて
新しい感覚が生まれそうになる。
「こう言うのも正文君、良いんだ?」
「ふぁはんひゃい…ふぇんふぁふぁんひ…」
「く…すぐって…」
かをるさん、さりげなくSだもんね。この状況
を一番楽しんでいるのは間違いなくかをるさん
だと思う。僕等を開発する事が心底楽しいみた
いだし。
そして、背後からかをるさんに口を吸われる。
冴は置き去りのままかな、と思ったらしっかり
合流。三人で唾液を共有して、臭いを混ぜあう。
しらふに戻った時の事なんて考えない、快感と
つながりだけ今欲しいから。
 
 目が覚めてからしばらくはただ目を開けてい
た。それからゆっくりと行為の反芻。体のだる
さと残った感触でおおよそは思い出せるけど、
それ以上のものを思い出したいし。
 「正文ィ、ガッコどうすんだ?」
 「今日は創立記念日で休み」
 「んー、そか」
 「冴こそ仕事はぁ?」
 「有給取得済み」
 顔を見合わせてニンマリ。良かったね、お互
い無理出来る予定で。
 「臭い、すごいね」
 「まあ、まだ前始末してるだけましな方だよ
な」
 「後始末が面倒ッちぃけどね」
 「紙使ってないから楽だろうがよ」
 「全身舐めたしね」
 「起きたんかよ、かをる」
 「起きてたよ、ずっと。横になってただけ」
 ベッドの上で胡坐をかくかをるさんの体に、
食欲が呼び起こされる。うん、いいよね。置き
ぬけの一口貰っても。
 「んむっふ。ご馳走様」
 「起き抜けにディープキスなんて元気だね、
正文君」
 「勿体無いじゃん」
 「そうだね。下の方も元気だし」
 「かをるさんこそ」
 「冴も元気?」
 「もちのろん」
 視線を絡ませてうなずき合うと、かをるさん
の口元に二人のちんちんを寄せる。同時にくわ
え込まれて朝から感覚がひりひりしてくる。
 亀頭の快感にうっとりしていて油断してたら
お尻を激しくかき回される。これも、冴と同時。
お互い体がふらつきそうになるので支え合い、
そしてついでに舌を絡めあう。
 ふっとひらめいた言葉があった。どうしよう
かなと一瞬迷って、ままよと言ってみる事にし
た。
 「……とーちゃん」
 一瞬固まる二人。ま、いきなりだよな。家族
の振りだから名前で呼びあってたし割り切って
たんだから。
 でも、体でつながる家族もありなんじゃない
か、って思っちゃったしさ。うん。
 「どした?まー」
 肩をすくめて息吐いて笑って、冴が軽くキス
をしてくる。まー、って僕の事、だよね?
 「かーちゃんの事も忘れてないよね?まー君」
 かをるさんが僕のほほにキスをする。
 深く、息を吸う。
 「とーちゃん、かーちゃん」
 冴とかをるさんが頷く。
 「今頃甘えたくなった?まー」
 両側から熱くはさまれる。と言うよりも、こ
すり付けられる。
 「血の代わりに他の体液を交換し合う家族も
ありだよね」
 かをるさんの言葉に、皆すごく納得して、僕
等はその日改めて家族になった。

 で、それからどうなったかと言えば特に変わ
っていない。僕等の戸籍が変わったという話も
ないし、セックスの回数が減ったという事も当
然無い。
 ただ、セックスの時のお互いの呼び方は変わ
った。
 僕は「まー」になったし、冴は「とーちゃん」、
かをるさんは「かーちゃん」。恐ろしい事にそ
の方が燃えるんだから仕方が無い。でも、こう
言う家族なんだからありかもね、って思ってる。
 「まー、一寸」
 「なに?かーちゃん」
 「明後日はまーが総タチね」
 「いいの?」
 「お祝いだからね」
 そういわれてカレンダーをみたら、明後日は
僕の誕生日。
 「安いような、高いような」
 「何か試したいなら自分で用意してね」
 「へーへー」
 明後日ならなんとでもなるかな。きちんとし
たおもちゃじゃなくても良いかもだし。
 とりあえず僕は朝の用意をする事にした。先
ずはシーツを洗濯機に放り込んで、つけ置き洗
いにしておいて、と。
                  (了)

  2007.1.27脱稿  2007.4.8up

雑誌投稿を想定して書いた話。
作者なりのショタ家族解釈。